実務テンプレ

SBOM提出向け 抜粋区分・マスキング手順テンプレ
(そのまま使える雛形)

SBOM提出で一番の悩みは「どこまで出すか」です。

出しすぎると設計情報(IP)に近い情報が漏れます。一方で、出さなさすぎるとOEM/取引先の照会に答えられず、追加質問で工数が爆発します。

そこで本記事では、提出用SBOM(抜粋版)を作るための「抜粋区分」と「マスキング手順」テンプレを掲載します。

最初から完璧を狙わず、“必要最小限+後から説明できる(証跡が残る)”運用に寄せるのがコツです。

結論:提出は「3レベル」で決めると揉めない

SBOM提出の抜粋・マスキングは、次の3レベルに分けると社内合意が取りやすいです。

レベル1:照会回答用(最小)

CVE照会に答えるための“必要最小限”。

レベル2:取引先提出用(標準)

OEM/顧客の指定様式に合わせた提出物。

レベル3:監査・深掘り用(例外)

NDA前提・限定共有。原則は出さない(必要時のみ)。

この「レベル」を先に決めるだけで、毎回の議論が減ります。

【テンプレ】抜粋区分(提出レベル)定義

使い方: 社内ルールに貼って【 】だけ埋めてください。

対象製品:【製品名】 対象版数:【製品バージョン】 提出先:【OEM名/取引先名】 目的:【照会回答/契約・監査/その他】 適用レベル:【レベル1/2/3】

レベル別に「含める項目」の例

レベル1(照会回答用)

  • 製品名/製品バージョン
  • コンポーネント名/コンポーネントバージョン
  • 影響判断の根拠に必要な最小メモ(例:外部IFなし、機能無効)

レベル2(提出用)

  • レベル1 + (必要に応じて)搭載箇所(ECU/モジュール程度)
  • ライセンス(要求がある場合)
  • 供給元情報(要求がある場合。ただし後述のマスキングで調整)

レベル3(監査・深掘り用)

  • 依存関係の詳細、ハッシュ、ビルド情報など
  • ※NDA/限定共有が前提。提出の既定値にはしない

【テンプレ】マスキング(伏せ方)ルール

使い方: 下表をそのまま「出す/伏せる」を決める台帳にします。
「伏せる」場合は、“消す”か“置換(トークン化)”を選びます。

項目 レベル1 レベル2 レベル3 マスキング方法(例) 理由メモ
製品名/版数 出す 出す 出す なし 対象範囲の必須
OSS名/版数 出す 出す 出す なし CVE照会の必須
自社モジュール名(内部名) 伏せる 置換 出す MODULE_A 等に置換 IP/設計推測を防ぐ
ファイルパス/リポジトリURL 伏せる 伏せる 出す 行ごと削除 構造・運用情報が出る
顧客名/プロジェクト名 伏せる 伏せる 出す CustomerX 等 取引情報の秘匿
供給元(サプライヤー名) 伏せる 条件付き 出す NDA有無で出し分け 取引情報の秘匿
搭載箇所(ECU/機能) 任意 出す 出す 粒度調整(大分類) 影響説明に有用
ライセンス 任意 条件付き 出す 要求がある場合のみ 提出先要件に依存
ハッシュ/署名情報 伏せる 伏せる 出す 行ごと削除 攻撃面を増やす可能性
備考(到達性/無効化) 出す 出す 出す 技術詳細は削る “影響なし根拠”に必要
💡 マスキングのポイント
  • 「伏せる=空欄」だと追加質問が来やすいので、置換(トークン化)できるものは置換がおすすめです。
  • “影響なしの根拠”は短文で残すと照会対応が楽になります(例:外部IFなし/機能無効)。

【手順テンプレ】提出版SBOMの作り方(5ステップ)

  1. 提出の目的を決める(照会回答/契約/監査)
  2. 適用レベルを選ぶ(レベル1/2/3)
  3. 社内正本(フルSBOM)を固定(対象製品・対象版数)
  4. 抜粋→マスキングを適用(上の表で機械的に)
  5. 提出物として保存
    • 提出版ID / 提出日 / 提出先 / 対象版数
    • 参照した社内正本のID(証跡)

このままのテンプレを、自社向けに整備したい方はご相談ください。

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よくあるNG(提出が炎上するパターン)

  • NG:製品版数が書かれていない
    → “どの版のSBOM?”で追加質問が止まらない
  • NG:丸ごと提出
    → IP/取引情報のリスクが増える
  • NG:伏せすぎて意味がない
    → “照会に答えられないSBOM”になる
  • NG:提出版と正本が混ざる
    → 監査で矛盾(最新版がどれか分からない)

Auto PSIRT Cloudでの運用イメージ

提出版を作るときに重要なのは「提出版の再現性」です。

「いつ・どの正本を元に・どのマスキングルールで作ったか」を残しておくと、追加質問や監査が一気に楽になります。ツールを活用すれば、この「正本からの安全な切り出し」を自動化できます。


FAQ:SBOMの抜粋・提出について

Q1. SBOMはそのまま提出していいですか?

おすすめしません。SBOMは設計情報に近いことがあり、出しすぎるとIP/取引情報のリスクが増えます。提出は「目的×レベル」で抜粋版を作るのが現実的です。

Q2. マスキングは「削除」と「置換」どちらが良いですか?

可能なら置換(トークン化)が便利です。削除だけだと「なぜ消えている?」と追加質問が増えるため、説明可能な形(MODULE_A など)で残すと運用が安定します。

Q3. どこまで出せば照会(CVE影響有無)に答えられますか?

最小は「製品名・製品版数・コンポーネント名/版数」と、影響なしの根拠を短く示すメモです。搭載箇所は粒度を調整して付けると説明が楽になります。

Q4. 提出版の“証跡”として何を残すべきですか?

提出版ID、提出日、提出先、対象版数、参照した社内正本のID、適用したマスキングルール(版数)を残すと、監査・追加質問に強くなります。

マスキングや提出版の作成を自動化しませんか?

Auto PSIRT Cloudなら、社内の正本SBOMから、提出先や目的に合わせた「抜粋版(マスキング済み)」を安全かつ一瞬で生成できます。